敏夫に「特技は?」と尋ねたならば 「料理」と応えるだろう。 実際馴れているので手際はいい。 たが、若干衛生観念というものが欠けていると 春子は思う。 切った野菜が下に落ちたら 余裕で拾って鍋に入れるし 床にこぼれた水は なんの迷いもなく台拭きで拭…
柴犬のモコは、いよいよこの坂を上ったらば 自宅である、というところになって座り込んだ。 「またぁ。」 春子はこんもりと丸い茶色の塊が アスファルトのど真ん中で 一向に動く気配のないことにうめいた。 「ほら、モコ行くよ。」 行かないのである。 モコ…
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